比較的軽傷だった新型コロナウイルス患者の症状が急激に悪化する原因として、「サイトカインストーム」という現象があるという。
下のナショナルジオグラフィックの記事にあるように、免疫が暴走して健康な組織をも攻撃してしまうそうで、もともと免疫力の高い若者で多く発生し得るようだ。
コロナウイルスへの過剰な免疫反応は、体の他の器官にも影響を及ぼす。
2014年の研究では、MERS患者の92%に、肺以外の場所でコロナウイルスの症状が認められた。実際、SARS、MERS、COVID-19のいずれにおいても、肝酵素値の上昇、白血球や血小板数の減少、血圧の低下など、全身的な症状が見られた患者がいた。少数だが、急性腎障害や心不全を起こした例もあった。
しかし、これは必ずしもウイルス自体が全身に広がったという意味ではない。米コロンビア大学メイルマン公衆衛生学部のウイルス学者であるアンジェラ・ラスムセン氏は、「サイトカインストーム(免疫の暴走)」が起こった可能性を指摘する。
サイトカインとは、免疫系が警告を出すために産生する物質で、免疫細胞を召集して感染箇所を攻撃するよう働きかける。指示を受けた免疫細胞は、体の他の部分を救うために感染した組織を死滅させる。
人の体を外敵から守っている免疫系だが、体内で暴れ始めたコロナウイルスのせいで、大量のサイトカインを肺へやみくもに送り込んでしまい、大混乱を引き起こす。「銃でターゲットを撃つのではなく、ミサイルを撃ち込むようなものです」と、ラスムセン氏は説明する。すると、感染した細胞だけでなく、健康な組織までも破壊してしまう。
こうした大混乱は、肺にとどまらない。サイトカインは血液によって全身に運ばれ、複数の臓器で問題を引き起こす。これがサイトカインストームだ。
すると、事態は急変する。最も深刻なケースでは、サイトカインストームに加えて全身に酸素を送る機能が低下し、多臓器不全に陥る場合がある。
免疫の暴走がおきることも 新型コロナ、重症化の理由 - 日本経済新聞中国で猛威を振るっている新型コロナウイルスについては、まだ知られていないことが多い。しかしひとつだけ確実なのは、このウイルスに感染すると、体中に異変が起きるということだ。
サイトカインストームについては、だいぶ古いが下のイミダスの説明がわかりやすかった。
サイトカイン・ストーム [cytokine storm]
免疫の暴走と訳される。サイトカインとは、cyto(細胞)とkine(動作)からなる造語で、細胞から放出されさまざまな細胞間に相互作用をもたらすたんぱく質因子の総称である。サイトカインは標的の細胞に働きかけて、免疫、炎症、生体防御などの面で重要な役割を果たすもので数百種類があり、その代表としてインターフェロン、インターロイキンが知られている。特定のサイトカイン遺伝子にスイッチが入るとサイトカインが合成されて、体液中に分泌される。分泌されたサイトカインは体液で運ばれて、標的となる細胞のレセプター(受容体)に働きかけ、情報を伝えて特定の遺伝子の活性化を促し、標的細胞に生理的変化をもたらすことになる。免疫もこうした仕組みで機能しているが、新型インフルエンザのH1N1やH5N1ウイルスの場合、免疫を持たない人にはサイトカインが過剰に分泌されて暴走化し、自己を攻撃する作用をもたらすとされている。免疫力の弱い高齢者より、とりわけ免疫力の強い若者については、免疫系が過剰に反応し、全身に嵐のように混乱した状態をもたらすことから、サイトカイン・ストームと呼ばれる。かつて1918~19年にかけて世界的に流行して多くの死者を出したスペイン風邪で、青年層に被害者が多かったことも、サイトカイン・ストームによるものと見られている。新型インフルエンザには、強毒性とサイトカイン・ストームを起こす性質があり、高い死亡率につながる可能性が高い。
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3月初旬にこの記事を読んで、「じゃあ私は免疫抑制剤を使っているからサイトカインストームにはならないのかなぁ(ついでに若年層でもないし)」
と思ったら、
「関節リウマチ治療薬・アクテムラ 新型コロナウイルスによる重症肺炎でフェーズ3開始」
という記事が出ていた。
中外製薬は3月19日、親会社であるスイス・ロシュが関節リウマチ治療薬・アクテムラ(一般名:トシリズマブ(遺伝子組換え))について、新型コロナウイルス感染症による重症肺炎を対象に臨床第3相試験を開始すると発表した。米国を含むグローバル試験として、全世界で330人の患者を登録し、安全性・有効性を検討する。4月上旬にも患者登録を開始する計画だ。同剤は、中外製薬が大阪大学と共同で研究し、創成した日本発の医薬品。同社は国内での臨床試験の実施は、「検討中」としている。
臨床第3相試験は、「COVACTA」は、新型コロナウイルスによる重症肺炎患者330人に標準療法を実施したうえで、プラセボを対照に同剤の安全性・有効性を検討する。主要・副次評価項目には、臨床状態、死亡率、機械的人工換気、集中治療室(ICU)での治療などを置く。ランダム化から60日間をフォローし、早期に中間解析で有効性を検討する予定という。
◎IL-6遮断で一部の過剰な免疫反応に効果 中国では投与認可も
同剤は、炎症サイトカインであるIL-6の受容体を遮断することで効果を発揮する。CAR-T細胞療法の副作用であるサイトカイン放出症候群(CRS)の適応を有するなど、一部の過剰な免疫反応に対して効果があることが知られている。このため、新型コロナウイルスへの有効性も期待されている。
中国などでは医師主導臨床試験が実施されており、有効性に関連する症例報告も複数ある。こうした状況を踏まえ、中国では3月から同剤の新型コロナウイルスへの投与を認可している。
関節リウマチ治療薬・アクテムラ 新型コロナウイルスによる重症肺炎でフェーズ3開始 | ニュース | ミクスOnline
中国では既にアクテムラが使われているのですね。
抗インフルエンザ薬のアビガンや、開発中のエボラ出血熱の薬など、効果があるとされる薬もちらほら上がっていて、少しは光が見えてきそうだ。
コメント
こんにちは。
新型コロナウイルスですが、コアラさんは大丈夫でしょうか。
こちらは、いまだに通勤2時間です。テレワークはPCの設定が間に合わないとかでできず、自宅近くのオフィスでの勤務に切り替えたい旨の希望は出していますが…。ついに、ロックダウンになっても出勤するように指示がでました。
関節リウマチであることを会社に言えていないのがこういうときに響いています(最初の膠原病の際に退職勧奨をされているので、会社を信用できません)。
グチが先行してしまいすみません。
サイトカインストームは膠原病でもなる人はいます。私の知っている例でもアクテムラの投与や今はあまり使われないのかもしれないですがステロイドの大量投与やシクロスポリンなど(免疫抑制剤)の投与も闘病仲間からは聞いたことがあります。(なお、膠原病でのサイトカインストームは若年層だけではないですよ〜。)
アクテムラが有効だと確定した場合、既存の患者さんと新型コロナウイルスの患者さんでアクテムラ不足の問題が発生しないように、増産体制にも力を入れて欲しいです。もしくはケブザラ(アクテムラと同じくIL -6がターゲット)もうまく使うとか…。
もともとマスクは多めに備蓄していたものの、あと2ヶ月弱で無くなるので、アクテムラなど有効な薬の候補が上がってきているのは心強いです。
毎日、よく寝て、よく食べて、手洗い、うがい、アルコール消毒、不要なものは触らないようにして、エレベーターのボタンなどは触っても指の腹では触らないようにして、通勤も隣り合わせに座らないようにして(でも、キャパ的にムリ)…。皆さん、どうなさっているのか?お知恵を拝借できたら嬉しいです。
コアラさんも、お仕事で危険地域への渡航命令が出ないようにお祈りしています。
あさみさん、こんにちは。コメントありがとうございます!
この状況での出勤要請は感染の恐れとともに心理的ストレスも多いですよね・・・。経済的影響を考えなければ、海外のようにロックダウンしてくれた方が心理的には楽になれるのですが。
私は実は3月からテレワークで自宅にいます。ただし、4月後半はプロジェクトの勤務地が変わり、出勤する方向です。マスクが足りないので困ります。
コロナ鬱とも言える症状で気分が乗らず、メモしている現在の状況もなかなかブログにアップするところまでになりません(苦笑)
サイトカインストームの情報ありがとうございます!勉強になります。
免疫とは知れば知るほど恐ろしいというか不思議なものですね。
そうそう、私もエレベーターのボタンを指の腹で押さないように気をつけていますが、ぼーっとしていて忘れてしまうことも多々。それから、知らないうちに手で目をこすったりしているので、やばいですね。